不要になったパソコンのデータを消去するにはどうすればいいか、気になりますよね。パソコン自体はメーカーや家電量販店、自治体などでも回収してくれます。ただし、パソコンの中のデータまで消去してくれるとは限りません。本記事では、パソコンのデータを完全に消去するための方法をご紹介します。データを消去しないまま処分してしまうと個人情報が漏洩してしまいますし、悪意のある人間の手に渡れば悪用される恐れもありますので注意してください。記事内で解説している方法で、復元できないように完全に消去しましょう。
パソコンの処分についての法律
パソコン自体の処分については、その方法が法律で定められています。平成13年(2001年)に施行された「資源有効利用促進法」に従い、処分を行います。資源有効利用促進法とは、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムを見直し、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を掲げ、循環するエコな社会システムへの移行を推し進めるための法律です。
具体的には、事業用のパソコンについてはメーカーが回収しリサイクルすることが義務付けられています。また、家庭用のパソコンについては、メーカーが回収・リサイクルすることを示す「PCリサイクルマーク」が貼付されており、一般使用者にもリサイクルへ協力するよう求められています。
上記の法律ではパソコンメーカーだけが回収の義務を負っていましたが、平成25年から「小型家電リサイクル法」が施行されることで、家電量販店や自治体でも回収できるようになりました。ちなみに、2020年のパソコン回収の実績は、家庭用と事業用を合わせて38.6万台(前年比3.8%増)となっています。「一般社団法人 パソコン3R推進協会」回収された機器は、デスクトップ本体、ノートパソコン、ディスプレイ一体型パソコン、液晶ディスプレイとなっています。
パソコンの処分方法
具体的なパソコンの処分方法について見ていきましょう。
買取業者
1つ目は買取業者に売却する方法です。メリットとしては、不要なパソコンの処分及びデータ消去をしてくれるのに、現金がもらえる可能性があることです。店頭買取、出張買取、郵送買取とさまざまな方法で買取してくれます。ただし、製品によっては買取できない場合があったり、送料を別途負担しなければならないケースもあります。
無料回収サービス
2つ目は無料回収サービスを展開している業者に回収を任せる方法です。メリットとしては、費用がかからず無料でパソコンを処分できる点です。また、メーカーのパソコンはもちろん自作PCでさえも回収してくれる場合があります。ただし、無料で処分してくれるのは良いですが、高スペックなパソコンの場合は他で処分した方が現金がもらえる可能性があるため、依頼は慎重におこないましょう。
パソコンメーカー回収
3つ目はメーカーによる回収です。資源有効利用促進法にもとづき、パソコンメーカーが無料で不要なパソコンを回収してくれます。メーカーが自身の製品を回収することになるので、データ消去や処分方法については最も信頼性の高い方法といえます。ただ、回収までに時間がかかる(1〜2週間)点、PCリサイクルマークがない機器は回収できない(もしくは有料)点はデメリットになるでしょう。
家電量販店やパソコン販売店で下取り
4つ目は、家電量販店にて下取りに出す方法です。小型家電リサイクル法により、メーカーだけでなく量販店でも回収できるようになりました。新しいパソコンを買うなら下取りに出すのがオススメです。新品パソコンを値引きして購入できますよ。ただしデメリットもあり、故障品の場合は下取りしてくれないこともあります。
自治体回収ボックス
5つ目は自治体の回収ボックスで処分する方法です。こちらも小型家電リサイクル法により可能になった方法です。パソコン以外の機器(携帯、プリンターなど)も回収してくれる点がメリットです。ただし、データ消去はしてもらえないので、自分で行う必要があります。また、回収できるのはノートパソコンのみでディスプレイ一体型などは回収できない、といったケースもあるので、各自治体に一度確認をしてみると良いかもしれません。
フリマ・オークションサイトで販売
6つ目はフリマサイト・オークションサイトでの販売です。他の処分方法よりも、高額な金額を獲得できる可能性があります。フリマサイト・オークションサイトでの出品は中学生でもできるほど簡単なので、手間なくお小遣いを得られるかもしれません。ただし、他人の手に渡ることになりますので、データ消去はより慎重におこなう必要があります。実際、2019年に発生した神奈川県庁の行政情報や個人情報が流出して事件になった、神奈川県庁廃棄HDD情報流出事件はデータ処理業者の転売行為から発生しました。
データをきちんと消去しよう
上記で少し触れましたが、パソコンを処分する際は、データがきちんと消去されているかを確認するようにしましょう。お使いのパソコンには、非常に大切な情報が保存されています。処分を間違うと事件にも発展しかねないですよ。
勘違い1:重要な情報は入っていない
パソコンには、氏名や住所、連絡先などの個人情報が詰まっています。ウェブサービスを利用するときのID・パスワード、ネットで品物を購入した経験がある人ならクレジットカード情報も入っていることでしょう。また、メールのやりとりや写真や映像などのプライベート情報も保存している人もいるはずです。
勘違い2:パソコンはもう動かないから大丈夫
よくある勘違いは、故障などでパソコンが動かないからもう情報は読み取れないと思っているケースです。パソコンが故障していようが、情報は読み取れてしまいます。パソコンの中にあるHDDと呼ばれる記憶装置さえ無事なら、他のPCに繋げて復元ツールを使えば、誰でも簡単に情報を見れるようになってしまいます。
勘違い3:誰かがキチンとやってくれる
専門の業者に任せたとしても、全信頼を置いて丸投げするのにはリスクがあります。前項で触れた神奈川県庁の事件の関係者は、神奈川県庁・大手パソコンリース会社・データ消去専門会社です。作業は任せたとしても、データ消去の確認は自己責任でしっかりおこないましょう。
簡単に復元できる!誤ったデータ削除方法
データが消去されているのを自分で確認するために、まず間違った削除方法を知っておきましょう。
- データを削除
- ゴミ箱に捨てる
- ゴミ箱を空にする
- フォーマット(初期化)・・・ソフトウェアを使用
- 工場出荷状態・・・付属リカバリーCDを使用
上記でご紹介する5つの操作をしても、データはパソコンに残っています。
なぜなら、上記の操作はモニター画面上でデータが見えなくなるようにしただけだからです。パソコン内のメモリの中にはしっかりとデータが残っています。つまり、上記の操作だけでパソコンを人の手に渡してしまうと、あなたの個人情報は丸わかりという訳です。
個人情報の漏洩を防ぐデータ消去の方法
個人情報の漏洩を防ぐには、パソコン内にあるデータを見えなくなるよう操作するだけでなく、メモリの中から完全に消去する必要があります。
専用のソフトウェア
データ消去専用のソフトウェアで、データを完全消去する方法です。具体的には、ソフトウェアが、メモリ内を消去用のデータで上書きし、元のデータを完全に読み取りできない状態にします。ソフトウェアには有料・無料さまざまな製品が存在します。中でも消去の確実性が高いものとして推奨されているのは以下の方式です。
- 家庭用:「ゼロライト方式」「ランダムライト方式」
- 事業用:「NIST800-88方式」「DoD5200.28-M方式」「グートマン方式」
自身で実施する場合も業者に依頼する場合も、ソフトウェアでの消去をする場合は知っておいて損はないはずです。
強力な磁気で破壊
HDD搭載のパソコンの場合、強力な磁気を発する装置でメモリを破壊します。磁気による消去をした場合、メモリはそれ以上データ保存としての役割を果たすことができなくなります。つまり、パソコンの再利用・転売はできなくなるということです。ソフトウェアより消去の確実性は上がります。磁気装置は高額な機械なため、業者に依頼するのが一般的です。
物理的に破壊
パソコン内にあるデータ保存部品を、物理的に破壊(破損、裁断など)する方法です。磁気同様パソコンの再利用はできなくなりますが、最も確実にデータを消去する方法です。
具体的には、パソコンからHDDを取り出し、HDDの円盤ディスク部分(データの保存、データの読み込み・書き出しを担当)を直接鈍器などで破壊します。
データを完全に消去するための3つの方法をご紹介しました。情報の重要度によっては組み合わせて消去することもできるので、業者にパソコン処分を依頼する際は相談してみると良いでしょう。
消去方法の選び方
故障品のパソコンを処分する場合、パソコンが動かず、データの消去に困ることもあるでしょう。その際は、機器の動作によってデータ消去の方法を選択します。
- パソコンとHDDどちらも稼働する・・・ソフトウェア、磁気破壊、物理破壊いずれも有効
- パソコンが動かないがHDDは稼働する・・・HDDを別のPCに移してからソフトウェア消去、磁気破壊、物理破壊が有効
- HDDが動かない・・・磁気破壊、物理破壊のみ有効
まとめ
パソコンを処分する方法についてまとめます。
- パソコンを処分する方法は「買取業者、無料回収サービス、パソコンメーカー回収、家電量販店での下取り、自治体回収ボックス、フリマサイトで販売」
- パソコンのデータを完全に消去する方法は「ソフトウェア消去、磁気破壊、物理破壊」
パソコン処分の方法は様々ありますが、個人情報の漏洩には十分注意してください。
本記事で確実なデータ消去の方法は理解できたと思うので、業者の作業方法の見極めに利用していただけると幸いです。