使わなくなったサーバはどのように処分すれば良いのだろう、と気になりますよね。
パソコンならメーカーや自治体が回収をしていることが多いですが、サーバは回収対象外になっているのがほとんどです。サーバの場合、「産廃業者」か「専門業者」に回収・廃棄を依頼することになります。本記事では、産廃業者・専門業者、それぞれのメリットやデメリットを解説しています。また、サーバ廃棄についての注意点、料金の相場感などもご紹介していますので、ぜひサーバ処理をする際の参考にしてください。
古いサーバを放置するのはリスク
サーバは以下の理由から、定期的に新しいものに取り替えるのが一般的ですよね。
- データセンターの移設(データ容量の拡大)
- 社内ネットワークの更新(セキュリティ、コスト、通信速度の改善)
- サーバの故障
ですが、サーバの更新はしたものの、廃棄の方法がわからずそのまま放置、担当者が退職したので誰も廃棄せずそのまま放置、なんてことが多々あります。
サーバには会社の業務情報や機密情報が保存されています。誰かが気づいて廃棄してくれるかもしれませんが、サーバ内のデータを消去しないまま廃棄してしまっては、情報漏洩を引き起こすことにもなりかねません。情報漏洩は事件に発展するリスクがありますので、サーバ廃棄の際は、データが完全に消去されていることを確認し、慎重におこないましょう。
サーバの処分(撤去・廃棄)方法
サーバ処分の方法は、以下の2通りです。
- 産業廃棄物処理業者による回収・廃棄
- サーバ処分の専門業者による買取・廃棄
データを消去→回収→廃棄の流れは両者とも一緒ですが、それぞれの業者で作業をしてくれる範囲が異なりますので、費用や作業負担を検討してから依頼する業者を選ぶと良いですよ。
産業廃棄物処理業者に依頼するメリット・デメリット
産業廃棄物処理業者(産廃業者)とは、企業から排出されるゴミ(産廃法で指定)を収集・運搬する民間業者です。なお、営業活動には管轄自治体の許可が必要です。
- メリット:費用負担が小さい、故障機器も回収、メーカー種別不問
- デメリット:データ消去は自己責任、アンラック作業や撤去も自己責任
産廃業者に依頼するメリットは、費用負担が小さく、どんな機器でも回収してくれる点です。運搬が主な費用になるので、業者に持ち込みをすれば無料で処分できる可能性もあります。また、廃棄物の処理なので、故障していようがどこのメーカーであろうが関係ありません。
デメリットは、廃棄に最も大切なデータ消去は自己責任でおこなわなければならないこと、アンラック(サーバーを取り付けているラックからの撤去)や片付けもしなければならないので、費用の負担が小さい分手間は多くなります。そこまで数が多くないサーバの撤去であれば、産廃業者での処理がおすすめです。
専門業者に依頼するメリット・デメリット
専門業者とは、コンピュータ機器の製造・回収・廃棄までを専門にしている業者です。環境構築から完全撤去までのノウハウがあるので、廃棄に最も大切なデータ処分含め、要望があれば1から10まで依頼できます。
- メリット:売却できる、データ消去も可能、機器の取り外しも可能、サーバ以外の買取も可能
- デメリット:運搬費用が大きい、買取金額がマイナスになることもある
専門業者に依頼するメリットは、機器の撤去についての専門的なノウハウを持っていることです。データ処分については、専用ソフトで完全に復元不可能なレベルの処分をしてくれます。また、産廃業者の場合に自分でやらなければならなかった撤去作業・運搬作業も可能です。処分の時間が取れない場合は、一括での依頼ができる専門業者に任せるのが良いでしょう。
ただし、デメリットもあります。運搬については、買取企業が運搬を外注している場合、費用が割高になることがあります。また、メーカーによっては価格が付かないケースも多々あるので、輸送費や人件費が買取金額を上回る場合、料金を支払って処分をしなければなりません。
個人の場合
個人の場合、サーバ処理の方法は法人と少し異なるため注意が必要です。
- 各自治体にて粗大ゴミとして廃棄
- サーバ処分の専門業者による買取・廃棄
産業廃棄物は事業運営により発生した廃棄物を指しているため、家庭から出る廃棄物とは分けて処理することが法律で定められています。つまり、事業ででた廃棄物を個人で出すのは違法になってしまうのです。ちなみに、個人事業主の届出をおこなった上で発生した廃棄物なら、産業廃棄物として処理することが可能です。ですので、個人で出す場合は粗大ゴミとして自治体の廃棄手順に従って処理する、もしくはパソコン機器の専門業者に依頼するかの2通りになります。
サーバ処分時のデータ消去は非常に重要
サーバの処理方法について確認ができたでしょうか。繰り返しになりますが、産廃業者・パソコン機器の専門業者いずれに依頼をするにせよ、サーバ処分の際に最も気にしなければならないことは、「データ消去」です。なぜなら、データ消去を怠ったまま機器を廃棄すると、機密情報が流出する可能性があるからです。情報流出が発覚すれば、会社の信用が失われるだけでなく、損害賠償など経済的な負担を強いられることになります。実際に、令和になってからもデータ削除が不十分だったせいで、事件にまで発展したケースもあります。
神奈川県庁廃棄HDD情報流出事件
2019年(令和元年)に神奈川県庁の廃棄HDDから機密情報が不正に流出した事件が大きな話題となりました。神奈川県庁とリース契約をしていたリース会社の間で発生した事件です。県庁からパソコンが返却され、リース会社は下請けの専門会社にデータ消去を委託していました。ですが、委託業者の従業員は、リース会社から預かったパソコンのHDDをデータ未処理のまま持ち出し、ネットオークションで転売してしまいます。HDD購入者がデータを復元処理したところ、個人情報や神奈川県庁に関する行政文書が大量に保存されていたことに気づき、事件が発覚しました。なお、神奈川県とリース会社との間で合意された損害賠償額は、最終的に約4,000万円になりました。
データ消去の方法
データ消去の方法ですが、主に「物理的な破壊」「ソフトウェアでの処理」の2つの方法でおこなわれます。これらはデータを復元できないレベルまで完全に消去するための方法です。一般には馴染みのないデータ消去の方法かと思いますので、どのように処理をするのかよく確認しておきましょう。
HDDを取り出し破壊
サーバの中にあるHDD(データ保存用ディスク)を取り出し、叩き割ってHDDそのものを直接破壊する方法です。データ消去の確率は高い方法ですが、破片の飛び散りで怪我をする可能性があり、多数のサーバを破壊する際には大変な手間になります。
データ消去ソフトで処理
データ消去専用のソフトウェアを使用し、HDDのメモリの中に大量の無意味なデータを放出・上書きして、二度と元のデータを読み込めないように処置する方法です。サーバ自体に危害を加える訳ではないので怪我をする心配はないですし、消去処理はソフトウェアがやってくれるので一度に多数のサーバのデータ消去を実施できます。市販のソフトウェアでも軍や官公庁などで使われる高い技術での消去処理をしてくれる上、初心者にも操作しやすい仕様になっているので、直接破壊に比べて手間がかからず確実性高く消去が可能です。
どちらか一方を選んで消去しても良いですが、機密性の高い情報の消去であれば、直接破壊・ソフトウェア消去どちらも実施したほうが良いですね。社内で実施する場合はデータの重要度別で処理方法を適宜選択するための規則を設けたり、専門業者へ依頼する際は適切な方法を相談するなどして、完璧なデータ消去に努めましょう。
サーバ処理の費用
サーバ処理をする際の全体の費用感をご紹介します。
産廃業者
<費用目安>
- 粗大ゴミとしての回収費用・・・3000円/1台
- 運搬・・・3万円〜
産廃業者に依頼する場合は、サーバを粗大ゴミとして回収する費用が1台につき3000円ほど、運搬については規模によって異なりますが3万円ほどかかります。10台のサーバーを処理する場合、6万円ほどの計算になりますね。ただし、データ消去のために法人用のソフトウェア(10万円〜)が別途かかりますし、サーバを撤去するのは自分達で実施しなくてはなりません。産廃業者はあくまで回収してくれる業者なので、回収の費用は抑えられますが、相当な手間がかかることは覚悟した方が良いでしょう。ただ、産廃業者も民間企業ですから他社と競争をしなくてはなりません。検討する際はぜひ相見積もりを取って、どこまでやってくれるのかを確認してみるのが良いですよ。
専門業者
<費用目安>
- 消去費用3000円〜/1台
- ラック撤去・運搬5〜10万円
- サーバ買取5000円
パソコン機器専門業者に依頼する場合は、データを消去するための費用が1台につき3000円ほど、ラックの撤去から運搬・回収までの費用が最低5万円です。10台のサーバーを処理する場合、合計8万円ほどの計算です。ですが、サーバの買取をしてくれる場合には、少し負担が小さくなることでしょう。専門業者に依頼するメリットは、データの消去から撤去・回収まで一括で全部実施してくれることです。ですが、記事内でご紹介したような事件が起こらないとは言い切れません。一括で依頼するにしても、ぜひしっかりと管理・監督しながら進めるようにしてくださいね。
まとめ
サーバ撤去の方法についてまとめます。
- サーバ撤去の方法は、「産廃業者にて回収」「専門業者にて一括依頼」
- サーバ撤去の最重要課題は「データ消去」
産廃業者、専門業者いずれに依頼するにも、データ消去の際は十分慎重に進めるようにしましょう。本記事でご紹介した知識がお役に立てると嬉しいです。